2025年9月10日
論文紹介8 ~光腐食を活用した光触媒の構造最適化~
白金を担持した硫化カドミウム光触媒(CdS-Pt)の光化学的エッチングによる構造最適化に関する論文が、Chemical Communicationsに公開されました。また、本研究は第61巻第73号のInside Front Coverにも採用されました。
本研究では、溶融塩処理法で合成した高結晶性CdSに対し、電子トラップ法を用いてPt助触媒を担持し、Pt-CdSを作製しました。さらに、乳酸存在下で光照射を行うと、ウルツ鉱型構造の[001]方向に沿ってエッチングが進行し、柱状構造が残存する粒子形態へと変化することが明らかになりました。この加工後のPt-CdSは、不安定な(001)面の露出が減少することで安定性が向上すると同時に、励起キャリアの利用効率が高まった結果、最大で外部量子効率 86%という極めて高い水素生成活性を示しました。
CdS光触媒は、私が学部4年生のときに初めて扱った材料ですが、研究を進めれば進めるほど新たな疑問や興味深い特性が次々と現れ、困ってしまいます・・・。当時は光腐食反応をいかに抑制するか試行錯誤を重ねていましたが、本研究ではその「欠点」をあえて利用するという発想の転換に至りました。光子の利用効率が100%に迫ったことは大きな節目ではありますが、CdSを対象とした研究はもう少し(あるいはまだまだ)続いていくのだろうと感じています。